今年の世界保健機関年次総会でシャーガス病が議題から欠落

[2009年5月18日] これは第62回世界保健機関 年次総会(WHA)に参加される各国代表団の皆さまへのお知らせです。この度、異例の時間制約により、シャーガス病(南アメリカ・トリパノソーマ病)が今年の総会の議題から外されました。この病気の発見から100年目の今年、いまだに死亡の原因となり、世界中で何百万人という数の人々がこの病気の影響を受けていることを考えると、これは疑う余地もなく機会の喪失と言えるでしょう。

非営利組織である「DNDi(顧みられない病気のための新薬イニシアティブ)」は、シャーガス病、リーシュマニア症、アフリカ睡眠病、マラリアといった病気の新しい治療薬の研究開発を通して、これらの顧みられない病気に苦しむ人々の治療ニーズにあった新薬開発に取り組んでいます。病気の流行国における研究能力を向上し、顧みられない病気に対する世界的レベルでの認識を高めることにより、持続可能な形で開発を進めることを目指しています。こうした目的のためにも、皆さんにシャーガス病患者が何を必要としているのか気付いて頂くことが非常に重要なのです。

ラテンアメリカにおいても、世界的にみても、シャーガス病は重要な公衆衛生上の問題です。推定される全世界での感染率は約1.4%、感染の確認された地域も広がり始めています。 ラテンアメリカだけでも21カ国がシャーガス病の流行国であり、約1億800万人が感染のリスクに曝されています。2005年の推計では、南北アメリカだ けで約800万人が感染者がいました。正式な数字はありませんが、推定では世界中の感染者のうち、何らかの治療を受けている人の数は感染者全体の約1%にすぎません。病気によって失われた生命や生活の質を包括的に測定するための指標を示す障害調整生命年数((Disability adjusted life years(DALYs) )は667,000です。またシャーガス病による死亡者数は毎年推定で14,000名ですが、ラテンアメリカ地域において、これはマラリアを含む他の寄生虫疾患いずれより多く、世界的にも伝染性心筋症の主たる原因となっています。

この40年間、シャーガス病の感染者のための新しい治療薬は開発されておらず、現在行われている治療は十分なものではありません。使用されている2種類の治療薬は、どちらも小児用の剤型がありません。こうしたギャップを埋めるために、より政策面、科学面での取組みがなされるべきであると考えています。シャーガス病の治療と診断方法の研究開発(新しい処方剤形を含む)のための持続可能な枠組みの構築が必要なのです。

DNDiはシャーガス病のための新しい治療法の研究開発に力を尽くしています。現在、LAFEPE(ブラジルの公的な研究機関)と共に小児用剤形を開発しています。また、よく知られたアゾール系薬剤のシャーガス病治療に対する有用性も検証中です。更に、研究者との国境を越えた絆を基に、臨床試験方法の監督、臨床試験施設の選択、GCPトレーニングによるキャパシティー・ビルディングを行うための、シャーガス病研究プラットフォームを築くことにも取り組んできました。 しかし、まだまだやるべきことがあります。流行国、非流行国を問わず、皆様にはシャーガス病の感染者や感染のリスクに曝されている何百万もの人々に対する医療ケアの向上や関心を高めるために更なる努力と具体的な行動について考えていただきたいのです。我々は来年の世界保健機関 年次総会において、シャーガス病に関する包括的な決議案が提示され、支持されるよう提案したいと考えています。また、こうした取組みが今年後半の地域レベルの会議に引き継がれていくことを願っています。

DNDi
エグゼクティブ ディレクター
ベルナール・ペクール
infojapan@dndi.org