活動報告:講演会@つくばエキスポセンター

[2014 年10月15日]

2014年8月24日(日)つくばエキスポセンターにて、特定非営利活動法人DNDi Japan事務局長の平林が「顧みられない熱帯病とその治療薬の必要性」について講演を行いました。本講演は、DNDiのパートナーであるアステラス製薬株式会社の企業展示に合わせて実施されたものであり、DNDi Japanにとっては小学生を主な対象として講演する初めての機会となりました。

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つくばエキスポセンター 研究機関等紹介コーナー
http://www.expocenter.or.jp/?page_id=13274

当日は小学生やご両親だけでなく、幅広い年齢層の方々が関心を寄せてくださり、2回の講演で約50名の方々にご参加いただきました。講演準備中よりDNDiが制作したドキュメンタリー映像を流して、顧みられない熱帯病とDNDiの活動を紹介しました。初めて見る病気の症状に、集まってきた小学生からは「怖い」という率直な反応もありましたが、同世代の子どもたちが発症し、治療を受ける姿は彼らの記憶に残るものだったと思います。

講演の冒頭では、アフリカ睡眠病について映像や写真を使いながら説明しました。顧みられない熱帯病はアフリカ、アジア、中南米などで暮らす貧困層に感染者の多い17の熱帯病の総称です。アフリカの36ヶ国で見られるアフリカ睡眠病は、ツェツェバエの媒介による寄生虫疾患です。モニターにツェツェバエが人を刺す様子が映し出された瞬間、参加者の皆さんが一様に真剣な眼差しで見ていたのがとても印象的でした。アフリカの日常生活には感染症の脅威が常に存在していることを実感していただける内容となりました。

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顧みられない熱帯病とアフリカ睡眠病について紹介する平林

その後、なぜ顧みられない熱帯病の治療薬の開発が必要であるのかを、クイズや体験学習を通して説明しました。

まず始めに、アフリカ睡眠病の既存薬の課題について、クイズを交えて説明しました。1949年より使用されていたメラルソプロールは、100人に5人が副作用で亡くなる程、毒性が強く、耐性により効果も下がっていました。1982年に効果の高いエフロールニチンが開発されましたが、点滴であるため1人の患者さんの治療に必要な医薬品や医療器材の重量は約10kgに上り、投薬管理の大変な、患者さんや現場の医療者の負担も大きな治療法でした。道路や医療施設、上下水道設備などのインフラが整備されていないアフリカの貧困地域では、医薬品のアクセスは重要な課題です。2009年にDNDiの取り組みにより、点滴薬と錠剤の組み合わせによる安全で効果の高い新たな併用療法が開発・導入され、患者さんや医療関係者の負担は軽減されましたが、更に安全性や有効性が高く、服薬期間の短い経口剤を開発していくことが、治療の改善につながります。本講演を通して、日本とアフリカの環境の違いや薬の開発の必要性を実感していただけたことと思います。

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アフリカ睡眠病の治療に必要な薬剤の重さや治療キットを紹介する平林

続いて小児用の薬の必要性について、体験学習を交えて説明しました。通常、小児の治療のためには、成人用の薬の投薬量を調整するだけでなく、小児の成長や薬物特性に応じた適切な薬物含有量の薬を投与する必要があります。顧みられない熱帯病で苦しむ多くの子どもたちにとっても、安全で効果の高い小児用の薬が不可欠ですが、疾患によっては成人用の薬の量を調整して投与しているのが現状です。本講演では、アステラス製薬株式会社にプラセボ(薬の成分の入っていない偽の薬)をご準備いただき、成人用の薬を分割する作業を通して、適切な投薬量に調整する難しさを体感してもらいました。更に成人用の薬を単純に分割して調整するだけではなく、小児のための新たな薬が必要であることを伝えました。


プラセボ錠の分割を体験する参加者

今回の講演で初めて顧みられない熱帯病の話を聞く参加者も多かったと思いますが、遠いアフリカの国々が抱える問題を身近に感じ、一緒に考え、行動するきっかけとなれたことを願っています。これからもDNDi Japanは顧みられない病気の治療のために、製薬企業や研究機関等と薬の開発を進めるとともに、顧みられない病気と治療薬の必要性についてより多くの方々に理解してもらえるよう、活動に取り組んでまいります。

報告者:特定非営利活動法人DNDi Japan 森岡

※顧みられない熱帯病とは
ウイルスや細菌、原虫、蠕虫の感染によって引き起こされる疾患のことを指し、世界保健機関(World Health Organization: WHO)は開発途上国を中心とする149ヶ国の10億人以上が感染している17の疾患を、特に重要な顧みられない熱帯病として指定している。
(出展:WHO website http://www.who.int/neglected_diseases/about/en/