2015年3月25日(水)~28日(土)に神戸で日本薬学会第135年会が開かれる中、3月26日に山田陽城 特定非営利活動法人DNDi Japan 理事長(東京薬科大学薬学部 特任教授)と北潔 東京大学大学院医学系研究科 教授(DNDi 科学諮問委員)がオーガナイザーとなり、DNDi Japanの公益活動の一環として、一般シンポジウム「日本発 顧みられない熱帯病治療薬開発への挑戦」が開催されました。
「日本発 顧みられない熱帯病治療薬開発への挑戦」が開催された神戸学院大学
日本薬学会は約2万人の会員を有する歴史ある学会ですが、顧みられない熱帯病(NTDs)をテーマとしたシンポジウムが開催されるのは今回が初めてでした。多くのシンポジウムが同時開催される中、本シンポジウムには大学や研究機関、企業等より150名近くの方々がご参加くださり、NTDsが少しずつ顧みられ始めている!ことを実感しました。昨年より西アフリカでのエボラ出血熱の流行や日本におけるデング熱の発生など、熱帯病に関する話題が世間を賑わせるようになりましたが、それらに対して薬学領域のあらゆる立場の人たちが“取り組むべき課題“として認識していることを感じました。
「日本発 顧みられない熱帯病治療薬開発への挑戦」での講演の様子
シンポジウムではまず始めにオーガナイザーである山田陽城 教授(DNDi Japan 理事長)より、営利を目的としたシステムではない新たな仕組みによって、わが国の創薬力を生かしたNTDs治療薬の開発を目指していることが述べられました。続いて一盛和世 長崎大学熱帯医学研究所 客員教授より、WHOでのご経験から、NTDs対策に関するWHOの戦略や世界の動向について説明がなされ、オーガナイザーである北潔 教授(DNDi 科学諮問委員)より、NTDs各疾患の説明と日本の研究開発の動向が紹介されました。その後、山田陽城 教授よりDNDiが主導するパートナシップに基づいたNTDsの治療薬開発モデルが紹介され、DNDiと共に研究開発を行うエーザイ株式会社の浅田誠 博士、アステラス製薬株式会社の生田目一寿 博士より、企業としてNTDs治療薬開発に携わる意義や先進的な取り組みが紹介されました。最後に日下英司 厚生労働省大臣官房国際課 国際協力室長よりグローバルヘルスに対する日本政府の取り組みと公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の仕組みが紹介され、オーガナイザーによる総括にて「日本発のNTDs治療薬開発が実現されるまでこの動きを継続させていく」ことを確認し、本シンポジウムは締め括られました。
総括にて参加者と討議する山田陽城 教授
今回の各講演者の発表により、顧みられない熱帯病の治療薬を開発する、という共通の目標のもとに、産官学それぞれの取り組みが有機的につながり始めていることが伝わったことと思います。パートナシップの実現は決して簡単ではありませんが、シンポジウムを運営した立場としてパートナシップによって生み出される効果を肌で感じる機会となり、とても勇気付けられるとともに、最終的な成果が産み出されるまでこの取り組みを拡大し、継続させなければと身が引き締まる思いでした。
今後もDNDi Japanは、産官学の様々な組織が有する知識や技術、リソースを生かし、顧みられない病気の治療薬開発に向けて活動を強化していきます。
報告者:特定非営利活動法人DNDi Japan 森岡
※日本薬学会第135年会 ウェブサイト http://nenkai.pharm.or.jp/135/web/
※顧みられない熱帯病とは
ウイルスや細菌、原虫、蠕虫の感染によって引き起こされる疾患のことを指し、世界保健機関(World Health Organization: WHO)は開発途上国を中心とする149ヶ国の10億人以上が感染している17の疾患を、特に重要な顧みられない熱帯病として指定している。
(出展:WHO website http://www.who.int/neglected_diseases/about/en/)
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- 2024/2/15