欧州医薬品庁が初の経口剤であるフェキシニダゾール(Fexinidazole)をアフリカ睡眠病の治療薬に推奨

[2018年11月16日 パリ/ジュネーブ]

  • 顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ (DNDi)、サノフィ社 (Sanofi) およびアフリカのパートナーとの10年にわたるパートナーシップにより、この肯定的な見解が採択されました
  • フェキシニダゾールの承認は、死に至るアフリカ固有の顧みられない熱帯病であるアフリカ睡眠病の制圧を目指す国際社会の努力を後押しします

欧州医薬品庁のヒト用医薬品委員会 (European Medicines Agency’s Committee for Medical Products for Human Use:CHMP) が、フェキシニダゾールの使用に対する肯定的な科学的見解を採択しました。フェキシニダゾールは、アフリカ睡眠病のすべてのステージで効果が認められた初の経口治療薬です。非営利の研究開発組織であるDNDi (Drugs for Neglected Diseases initiative 顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ) が主導した臨床試験、およびサノフィ社からの申請の結果、承認されました。この決定により、2019年中にフェキシニダゾールを流行国に供給する道が開かれました。

アフリカ睡眠病、もしくはヒト・アフリカ・トリパノソーマ症 (HAT) は、治療しなければ通常死に至る疾患です。ツェツェバエに刺されることにより感染し、攻撃行動や精神病の症状、そしてこの顧みられない病気の名前の由来となった、衰弱による睡眠障害などを引き起こします。サハラ砂漠以南のアフリカに住むおよそ6,500万人が感染リスクに曝されています。

コンゴ民主共和国保健省の顧みられない熱帯病専門家であるヴィクトル・カンド (Victor Kande) 博士は、「私は医師として、自分の人生をアフリカ睡眠病に捧げてきました。経口剤のみによる治療法は、何十年もの間、私の夢でした。この病気で苦しんでいるのは、世界の (実際にはコンゴの) 最も僻地に住む、最も弱い立場の人々です。皆、安全かつ有効、そして簡便な治療法を必要としています。」と述べています。カンド博士は、フェキシニダゾールの臨床試験責任者でした。「たった10年ほど前でも、私たちは未だ患者の5%が副作用で死に至るヒ素誘導体でこの病気を治療していました。現在の治療法は有効で安全ですが、患者は入院が必要で、保健システムにおける多大な物流上の負荷をもたらしています。フェキシニダゾールは、シンプルな錠剤です。この致命的な病気に対する私たちの取り組みに大きく貢献します。」

フェキシニダゾールは、ガンビア・トリパノソーマ症 (Trypanosoma brucei gambiense;西および中央アフリカで見られる最も一般的なアフリカ睡眠病) に対し、1日1回10日間処方されます。重要な点は、フェキシニダゾールが (i) 病気の初期 (第1期) および (ii) 原虫が血液脳関門を通過し、患者が神経精神症状を示す第2期の両方に効果を持つ、初の経口治療薬であるということです。

コンゴ民主共和国および中央アフリカ共和国の患者749人を対象とした臨床試験において、フェキシニダゾールは、成人と体重20 kg以上かつ6歳以上の小児の、両ステージの患者に高い有効性と安全性を示しました。この結果、フェキシニダゾールにより既定の入院治療が不要になり、腰椎穿刺の回数の減少にもつながることが示唆されました。

「フェキシニダゾールは、これまでにない非営利の研究開発モデルによって開発された全く新しい化合物です。DNDiが開発した初の新規化合物です。」とDNDiの最高責任者であるベルナール・ペクール (Bernard Pécoul) 医師は述べています。「飛躍的に進歩したこの治療法は、全く顧みられていなかった病気に対し治療薬の発見、開発、承認を目指したDNDiとサノフィ社の特別なパートナーシップの賜物です。」

フェキシニダゾールは、5-ニトロイミダゾール誘導体です。2005年にスイス熱帯・公衆衛生研究所 (Swiss Tropical and Public Health Institute) との共同プログラムにおいて、DNDiが抗寄生虫作用を有する化合物を探索する中で再発見しました。フェキシニダゾールは、ヘキスト社 (現サノフィ社) が1980年代に戦略的な理由で開発を中断した化合物です。2009年にDNDi とサノフィ社は、共同でフェキシニダゾールの開発、製造および供給に取り組む契約を締結しました。この中で、DNDiは、前臨床、臨床および製剤の開発を担当し、サノフィ社が産業開発、薬事申請、製造および供給を担当しています。

「飛躍的に進歩した本治療法は、これまで長い間アフリカ睡眠病に関わってきたサノフィ社の、画期的な最新の成果です。」と最高医学責任者で、医療部門エグゼクティブ・バイス・プレジデントであるアミート・ナスワニ (Ameet Nathwani) 博士は述べています。「フェキシニダゾールの成功は、官民パートナーシップにより、安全で有効な薬を最も顧みられない患者に届けることができることを証明しています。サノフィ社は、アフリカ睡眠病制圧を支援する私たちのミッションの一環として、この薬を世界保健機関 (WHO) に寄付することを誇りに思います。」

2017年12月、サノフィ社は、欧州連合 (EU) 外で使用することを前提とした新薬の承認審査を行う画期的なメカニズムである欧州医薬品庁の第58条 (規則 (EC) No 726/2004) に対し申請資料を提出しました。第58条に基づく承認では、フェキシニダゾールの申請資料の審査に流行国 (コンゴ民主共和国とウガンダ) とWHOを加え、将来的な各国の承認や患者のアクセスを促進し、加速化させることも期待されています。

「流行国の保健省と共に、私たちは、最も困難な状況においても、質の高い臨床試験の実施が可能であることを示しました。」とDNDiの顧みられない熱帯病ディレクターであるナタリー・ストラブ-ウォルガフト (Nathalie Strub-Wourgaft) 医師は述べています。「これは最初の一歩にすぎません。患者が新薬にアクセスでき、新薬から恩恵を得られることを確実にしていく必要があります。」

DNDiは、フェキシニダゾールの開発に5,500万ユーロ (6,250万米ドル) を費やしました。この中には、前臨床および臨床試験の費用が含まれています。本プロジェクトは、ヨーロッパの7カ国 (フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スペイン、スイス、英国) およびビル&メリンダ・ ゲイツ財団、国境なき医師団 (MSF) などの民間ドナーからの資金により実施されました。

アフリカ睡眠病について
アフリカ睡眠病患者のほとんどは、コンゴ民主共和国で報告されています。2017年には、Trypanosoma brucei gambiense (ガンビア・トリパノソーマ) 症例の78%がコンゴ民主共和国で報告されており、中央アフリカ共和国、ギニア、チャドがこれに続きます。2018年7月に発表されたWHOの最新データでは、新たな症例数が持続的に減少していることが確認されています。2017年にWHOに報告された新規症例は1,447例のみでしたが、2016年には2,164例、また2009年には9,870例が報告されていました。しかし、アフリカ睡眠病の流行は、沈静化した状態から数十年の間隔で再燃する特徴を示しています。2012年に発表し、同年のロンドン宣言で支持された顧みられない熱帯病のロードマップの中で、WHOは、アフリカ睡眠病を公衆衛生上の課題とし、2020年までに制圧することを目標としています。

<DNDi について>
非営利研究開発組織である DNDi は、顧みられない病気、具体的には、ヒトアフリカトリパノソーマ症 (アフリカ睡眠病)、リーシュマニア症、シャーガス病、フィラリア症、マイセトーマ、小児HIV (エイズ) および C型肝炎に対する新規治療薬の開発を目的とした活動を行っています。NECTは2003年の発足以来、DNDiが開発した7つの新規治療法のひとつです。フェキシニダゾールはDNDiによる新規化合物からの開発が成功した初めての治療薬です。

フェキシニダゾールは以下の組織からの資金により開発されました。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団、米国; 英国政府、英国; オランダ外務省国際協力総局 (DGIS)、オランダ; ドイツ連邦教育研究省 (BMBF) KfWを介する、ドイツ; フランス開発庁 (AFD)、フランス; ドイツ国際協力公社 (GIZ) ドイツ政府として、ドイツ; フランス外務・欧州問題省 (MEAE)、フランス; 国境なき医師団 (MSF); ノルウェー開発協力局 (Norad)、ノルウェー; スイスジュネーブ州、Internal Solidarityオフィス、スイス; スペイン国際開発協力機構 (AECID)、スペイン; スイス開発協力庁 (SDC)、スイス; UBS Optimus財団、スイス; Brian Mercer慈善信託、英国; Stavros Niarchos財団、米国、およびアフリカ睡眠病キャンペーンに対する財団もしくは個人の寄付

<サノフィ社について>
サノフィ社は、健康上の課題に立ち向かう人びとを支えます。私たちは、人々の健康にフォーカスしたグローバルなバイオ医薬品企業として、ワクチンで人々を守り、革新的な医薬品で痛みや苦しみを和らげます。希少疾患をもつ少数の人々から、慢性疾患をもつ何百万もの人々まで、寄り添い支え続けます。
サノフィ社では、100ヵ国において10万人以上の社員が、革新的な医科学研究に基づいたヘルスケア・ソリューションの創出に、世界中で取り組んでいます。
サノフィ社は「Empowering Life」のスローガンを掲げています。

以上

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Photo credit: Xavier Vahed-DNDi