ジュネーブ/ロンドン発 – ウェルカム (Wellcome) が、非営利の研究開発 (R&D) 組織であるDNDi (Drugs for Neglected Diseases initiative 顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ) による新規リーシュマニア症治療薬の開発に1千万ポンドの支援を表明しました。リーシュマニア症は、世界で最も悲惨な寄生虫病の1つです。DNDi とウェルカムによる3年間のパートナーシップは、製薬業界とバイオテクノロジー業界、学術界およびPDP (製品開発パートナーシップ) の強みを活用し、経口投与で有効な全く新しい化合物を用いた新規の合剤開発を可能にするものです。
DNDi の最高責任者であるベルナール・ペクール (Bernard Pécoul) 医師は、「現在のリーシュマニア症治療は、毒性が強く、認容性の低い薬剤を、多くの場合、長期間にわたりつらい注射により投与し続ける必要があります。私たちの研究開発では、これまでそうした既存治療薬の改良に重点を置いてきました。しかし私たちは、ウェルカムとのこの新しい連携により、安全で、有効、価格が手頃で、かつ投与が簡単な全く新しい革新的な経口治療薬を開発し、これによって、治療状況の根本的改善が可能となることを期待します。」と述べています。
世界には10億人を超える人々がリーシュマニア症の感染リスクに曝されています。リーシュマニア症はサシチョウバエによって媒介されます。内臓リーシュマニア症 (visceral leishmaniasis) は、最も深刻な病態です。発熱、体重減少、脾臓や肝臓の腫脹が見られ、治療せずに放置した場合、死に至ります。毎年、5万から9万人の新規症例と3万人の死亡が報告されています。 もうひとつの病態である皮膚リーシュマニア症 (cutaneous leishmaniasis) は、毎年60万から100万人の新規症例が報告されており、感染した人の風貌・外観が損なわれることにより、差別の原因ともなっています。患者は現在、安全性、治療期間、薬剤耐性、安定性そして治療費用の観点から深刻な欠点のある治療を受ける必要があります。
「ウェルカムは、長きにわたって顧みられない熱帯病 (NTDs) の革新的な新規治療薬の開発を支援してきました。DNDi の包括的なリーシュマニア症プログラムを支援する今回の戦略的投資は、ウェルカムにとって、NTDs の創薬に関わる数多くの学術界や産業界とのパートナーシップを築く素晴らしい機会をもたらしました。私たちの最も重要な取り組みの一つは、さらなる革新を速く、規模を拡大して推し進めるために新しい技術を活用し、パートナーと協力して開発プロセスの改善に挑戦し続けていくことです。このプログラムでは、DNDi との連携が、これらのゴール達成に至る鍵であり、私たちの連携がこの悲惨な病気に苦しむ人々の人生を変えることを願います。」とウェルカムのイノベーション・ディレクターであるスティーヴン・キャディックは述べています。
本プログラムは、 ダンディー大学、セルジーン、グラクソスミスクライン、ファイザー、TBアライアンス、および武田薬品工業などのR&Dパートナーの強力なコンソーシアムから成り立っています。これらのパートナーは、リーシュマニア原虫に対し異なる作用メカニズムで異なった化学的分類に由来する、リード化合物、前臨床および臨床治療薬候補のポートフォリオを有しています。これから3年間にわたるプログラムでは、評価した10 の治療薬候補から、患者を対象とした第II相臨床試験で使用する合剤の成分となる、経口治療が可能な2種類の新規化合物 (NCEs) を選び出すことを目標としています。
本支援は、最も有望かつ効果の高い新規化合物の開発に重点を置き、世界保健機関 (WHO) のリーシュマニア症の疾病管理および撲滅戦略を後押しするものです。
「ウェルカムからの支援を受け、長期にわたってパートナーの間で実りある関係が構築できることを、嬉しく思います。この新しいパートナーシップが、リーシュマニア症治療薬開発コミュニティの中で相乗効果を生み、新しいパートナーを呼び込むことでしょう。患者にとって手頃な価格で有効性の高い新規経口治療薬を届けるために、私たちは最高レベルの科学技術を提供します。」とペクール医師は述べています。
本プログラムの支援ドナーのひとつであるグローバルヘルス技術振興基金 (GHIT Fund) は、武田薬品工業とのパートナーシップにより見出された化合物の開発に限定して支援を行う唯一のドナーです。
<ウェルカムについて>
ウェルカムは、素晴らしい発想の具現化を支援することにより、人々の健康改善を目的とする団体です。私たちは、政治的にも、経済的にも中立な世界規模の慈善団体です。私たちは、科学者や研究者たちの困難な課題に対する取り組みを支援し、想像力を刺激し、議論の活性化を支援しています。wellcome.ac.uk
<DNDi について>
非営利研究開発組織である DNDi は、顧みられない病気、具体的には、ヒトアフリカトリパノソーマ症 (アフリカ睡眠病)、リーシュマニア症、シャーガス病、フィラリア症、マイセトーマ、小児HIV (エイズ) および C型肝炎に対する新規治療薬の開発を目的とした活動を行っています。2003年の発足以来、DNDi は8つの新規治療薬を開発しました。
DNDi のリーシュマニア症治療の新規化合物開発プログラムは、ウェルカム (英国)、グローバルヘルス技術振興基金 (GHIT、日本)、国境なき医師団 (MSF)、英国開発庁 (英国)、オランダ外務省 (DGIS、オランダ)、ドイツ連邦教育研究省 (BMBF、KfWを介する、ドイツ)、スイス開発協力庁 (SDC、スイス) からの資金支援を受けています。
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Photo credit: Anita Khemka/DNDi