南南協力により開発された初のC型肝炎治療のマレーシアでの登録

       

  • C型肝炎ウイルス (HCV) に対するこの新しい併用療法は、致命的な病気の治療薬へのアクセスを待ち続けている中所得国の何百万もの人々にとって、新しい入手可能な価格の選択肢となる。
  • これまでの結果によると、併用療法による治療は安全で有効である。またこの治療の対象には、治療が難しい症例やHCVとHIVの重複感染者も含まれる。
  • 新薬ラビダスビル (Ravidasvir) は、非営利組織の支援により南南協力を通じて開発された初のHCV薬である。

 

クアラルンプール -2021年6月14日- この度マレーシア国家医薬品規制庁 (NPRA) は、官民パートナーシップによって開発された安全かつ有効なC型肝炎治療に条件付き承認を与えました。このパートナーシップは、マレーシア保健省、非営利研究開発組織のDrugs for Neglected Diseases initiative  (DNDi)、エジプトの製薬会社Pharco、マレーシアの製薬会社Pharmaniaga Berhad、および非政府組織のMédecins Sans Frontières/国境なき医師団 (MSF) により構成されました。

この薬剤は、非営利組織からの臨床試験の実施支援と資金提供を受け、南南協力により開発された、HCVに対する初の治療薬です。

このパートナーシップが結成された目的は、過去10年間で直面した解決の難しい公衆衛生上の課題の1つ、すなわち、3〜6か月で患者を治療できる新世代の強力なHCV治療薬とされる、直接作用型抗ウイルス薬 (DAA) への入手可能な価格でのアクセスができないという問題に取り組むためです。慢性肝疾患、肝硬変、癌、そして死亡につながる可能性のあるHCVは、世界中で約5,800万人が罹患しているにもかかわらず、これまでに治療を受けられたのはそのうち約13%に過ぎません。この疾患により年間約30万人が死亡しています。

「肝炎は治療できる可能性があるものの、必要としているすべての人々への治療の提供を妨げる悪循環が存在しています。例えば、この疾患はまるで「サイレントキラー」であり、診断は複雑で疾患を見つけることが難しく、さらに感染が分かってもDAAは高価なため手が出せません。」とマレーシア保健省の保健局長であるDatuk Dr Noor Hisham Abdullah医師は述べています。「マレーシアは、この悪循環を断ち切るために行動することを決心しました。私たちは、「見逃していた」患者を見つけるスクリーニングを積極的に行い、より簡便な診断テストを導入し、入手可能な価格の新しい治療を見出すための臨床研究を通して、適正な価格の治療へのアクセスを担保します。本日のマレーシアの発表は、2030年までにC型肝炎を制圧するという世界保健機関 (WHO) の目標を達成するための長い道のりのマイルストーンとなります。」

今回の承認により、成人の慢性HCV感染症に対し、新薬ラビダスビル (Ravidasvir) を他の薬剤と併用して使用することが認められました。ラビダスビルは、既存のDAAであるソホスブビル (sofosbuvir) との併用により、入手可能な価格の簡易かつ有効な公衆衛生上のツールとして、前述のパートナーシップによって開発されました。

DNDiとパートナーは、マレーシアとタイにおいて、ソホスブビルと併用したラビダスビルの有効性、安全性、および薬物動態を評価する非盲検臨床試験であるSTORM-C-1を実施しました。この試験は、マレーシアとタイの保健省、およびDNDiが治験依頼者となり実施されました。2021年4月にLancet誌Gastroenterology&Hepatologyで公表された結果では、この併用療法により、多様な成人集団における慢性HCV感染症に対する97%の治癒率と十分な認容性が示されました。被験者には、特に治療が難しいウイルス遺伝子型であるジェノタイプ3型に感染した患者も含まれていました。HIVの治療に使用される一般的な抗レトロウイルス薬との臨床的に有意な薬物相互作用は認められず、この新しい併用療法は臨床医にとって特に有用なものとなります。

 この新薬の開発は、当初から同じ公衆衛生上の目標を共有する、公的機関と民間組織とのパートナーシップによる成果です。すなわち、共通の目標は入手可能な価格の医薬品を開発することでした。これは研究開発が、市場原理ではなく、公衆衛生上のニーズによって主導されるイノベーションをどのように実現できるかを示す、具体的な例と言えます。」とDNDiの最高責任者であるBernard Pécoul医師は述べています。

ラビダスビルは、Presidio Pharmaceuticalsによって発見され、権利所有されている経口NS5A阻害剤であり、臨床開発と商業化のため、エジプトの製薬会社であるPharco PharmaceuticalsとDNDiにライセンスが供与されました。Pharcoが実施したエジプトでの初期第III相臨床試験では、ラビダスビルとソホスブビルの併用療法はジェノタイプ4型の患者における最大100%の治癒率を示しました。PharcoとDNDiは、マレーシアと東南アジアにおけるラビダスビルの登録と供給について、マレーシアの製薬会社であるPharmaniagaと提携しました。

「この新しい治療は、C型肝炎のない世界を実現するための強力なツールとなるでしょう。」とPharco PharmaceuticalsのCEOであるSherine Helmy博士は述べています。「なぜなら、この新しい併用療法は12週間の治療期間で300〜500米ドルという入手可能な価格で販売されるからです。」

「NPRAの承認は、マレーシアにおけるC型肝炎の安全で、有効で、アクセス可能で、かつ最も重要な入手可能な価格での治療を実現するための、たゆまぬ努力を続けてきたすべての関係者にとって、大きなマイルストーンです。」と、PharmaniagaグループのManaging DirectorであるDatuk Zulkarnain Mohamed Eusope氏は述べています。「これは、ジェネリック医薬品企業であるPharmaniagaにとって、新規化合物の開発に携わる初めての経験です。NPRAの継続的なサポートと、2年以上とされる標準的なタイムラインに対し、15ヶ月以内の承認を実現させた優先審査に感謝します。この最新の開発により、HCV治療の選択肢が増え、より入手可能な価格の治療への人びとのアクセスが促進されることを望みます。」

STORM-Cプロジェクトは、低中所得国におけるHCV患者の治療へのアクセス促進を目的とする、MSFのTransformational Investment Capacity initiativeの資金提供により実施されました。

「毎年、何十万もの人々がC型肝炎で死亡しており、治療へのアクセス拡大は医療人道上の義務です。」とMSFのDeputy Operations DirectorであるPierre Mendiharat氏は述べています。「HCVは、麻薬を使用する人々やHIVに重複感染した人々など、脆弱でしばしば疎外されている集団に影響を及ぼします。HCVを制圧するためには、ラビダスビルとソホスブビルの併用療法のように、使いやすく、簡易で、入手可能な価格の治療が必要です。」

ラビダスビルとソホスブビルの新規併用療法の登録は、ラテンアメリカなど他の国々でも計画されています。

「私たちの目標は、C型肝炎における命を救うための検査と治療を世界中で大規模に展開するための、政治的意思と資金調達を促進することです。」とBernard Pécoul医師は述べています。「マレーシアの例は、適切な意志、適切なパートナー、そして適切なツールがあれば、何を成し得るかを示しました。」

以上

 

DNDiについて

Drugs for Neglected Diseases initiative (DNDi) は、顧みられない病気の中でも特にシャーガス病、アフリカ睡眠病、リーシュマニア症、フィラリア感染症、マイセトーマ (菌腫)、小児HIV、およびC型肝炎を対象に、新規治療開発に取り組む非営利の研究開発組織です。アフリカ地域では新型コロナウイルス (COVID-19) 軽症/中等症患者を対象とした治療法特定のための臨床試験 (ANTICOV) を実施しています。2003年の設立以来、内臓リーシュマニア症 (カラ・アザール) のための一連の併用療法、2種類の固定用量抗マラリア薬、および新規化合物からの開発に初めて成功したフェキシニダゾールなどを含む、8つの新たな治療を開発し、患者に届けてきました。フェキシニダゾールはアフリカ睡眠病の両ステージに有効な治療薬として2018年に推奨されました。詳細については、www.dndi.orgをご覧ください。

 

Pharmaniaga Berhadについて

Pharmaniagaは、Boustead Holdings Berhad Group of Companiesの大手製薬会社であり、Armed Forces Fund Boardとともに会社の主要株主でもあります。マレーシア証券取引所のメインボードに上場しているPharmaniagaの中核事業は、ジェネリック医薬品の製造;研究開発;マーケティングおよび販売;医薬品および医療用製品の倉庫保管および流通;医療機器や病院機器、地域の薬局への供給、取引、設置などです。マレーシアにおける最高の製薬会社になるというビジョンを持ち、「常に正しいことを実行する」という哲学に導かれ、患者への情熱というモットーによって力を与えられています。Pharmaniaga Groupはマレーシアとインドネシアにおける9つの製造工場、全国的なロジスティクスと流通、および15カ国で登録された製品によって事業が強化されており、国際的な製薬業界での地域プレーヤーとしての地位を確立しています。www.pharmaniaga.com

 

Pharcoについて

Pharco Pharmaceuticals, Inc.は、エジプトで最大の医薬品メーカーであり、中東・北アフリカ地域での医薬品の研究、製剤、製造、および商業化に注力しています。現在8,000人以上の従業員を雇用し、6億5,000万を超える製品販売単位を有し、エジプトの医薬品市場のリーダーとしてランク付けされています。また世界中の47カ国に輸出しています。Pharcoは、極めて有効で安全な医薬品を入手可能な価格で患者に提供するという、1つの目標に向かって活動しています。サンフランシスコを拠点とする臨床段階専門の製薬会社であるPresidio Pharmaceuticalsから、以前は(PPI-668)として知られていた塩酸ラビダスビルのライセンスを取得しました。www.pharco.org

 

英文プレスリリース リンク

<報道関係問い合わせ先>
特定非営利活動法人DNDi Japan
中谷 香
E-mail: knakatani@dndi.org
Tel: 03-6258-0303