シャーガス病を対象とした創薬プロジェクトへのGHIT Fundによる支援決定

約1億1,800万円 (約895,000ユーロ) の追加資金により早期創薬およびスクリーニング段階の3つのプロジェクトに取り組みます。

 

[2021年11月4日]

2021年11月4日 ジュネーブ - Drugs for Neglected Diseases initiative (顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ、以下「DNDi 」) は、シャーガス病の新薬開発を目指した3つの創薬プロジェクトに対し、日本の公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金 (Global Health Innovative Technology Fund、以下「GHIT Fund」) による資金支援が決定したことをお知らせします。

より安全で、簡便で、有効なシャーガス病の治療薬は早急に必要とされています。シャーガス病の既存の治療薬は2種類のみで、しかも半世紀前に発見されたものです。有効であるものの、8週間にわたる長期投与としばしば深刻な副作用を引き起こします。

1つ目のプロジェクトはGHIT Fundの支援による先行研究に基づくもので、そこではシャーガス病を引き起こすクルーズトリパノソーマ(T. cruzi、病原寄生原虫)の500以上の遺伝子について、寄生虫の増殖に不可欠な25分子を同定しました。これら25分子について、シャーガス病の創薬標的分子としての可能性を検証し、最終的にオートファジー[1]を制御する因子を本プロジェクトの創薬標的分子として選択しました。

日本の国立研究開発法人産業技術総合研究所とのパートナーシップにより、DNDiはオートファジー制御因子を阻害することで作用する、新たな抗T. cruzi薬の初期ヒット化合物の取得を目指します。Fragment-Based Drug Discovery(FBDD)とDNDiの全細胞ベーススクリーニングで特定した抗T. cruzi活性を有する化合物ライブラリーのスクリーニングといった、相補的な2つのスクリーニング手法を用います。オートファジー制御因子はシャーガス病の標的検証とリード化合物創出におけるブレークスルーとなる可能性を有しています。

他の2つのプロジェクトでは、新たな化合物ライブラリーのスクリーニングを行います。DNDiの主要な研究開発パートナーである第一三共株式会社 (以下「第一三共」) が保有する37,000化合物、および武田薬品工業株式会社 (以下「武田薬品工業」) が保有する25,000化合物にアクセスし、韓国パスツール研究所 (Institut Pasteur Korea) にて抗T. cruzi活性を調べます。GHIT Fund/DNDiが定める基準を満たすヒット化合物群を特定し、さらなる創薬を進めることを目指します。第一三共および武田薬品工業は、化合物ライブラリーへのアクセス提供とインカインドによる支援でプロジェクトに貢献します。

2013年以降、GHIT Fundは、シャーガス病内臓リーシュマニア症皮膚リーシュマニア症マイセトーマ (菌腫) といった顧みられない熱帯病 (Neglected Tropical Disease、以下「NTD」) の研究開発プロジェクトを進めるDNDiの主要な資金ドナーです。新たなNTDs治療薬候補の特定を目指した、DNDiと複数の製薬企業によるグローバルなコンソーシアム「NTD 創薬ブースター」による取り組みもGHIT Fundの支援で実施されました。

 

[1]オートファジーは、損傷した細胞小器官や奇形のタンパク質の除去による自己分解メカニズム

 

シャーガス病について

シャーガス病はクルーズトリパノソーマという原虫が、「kissing bug」として知られるサシガメの刺咬により感染する疾患で、アメリカ大陸の21カ国で蔓延しています。患者はヨーロッパや日本、オーストラリアでも報告されています。約600 – 700万人の感染が推計され、年間3万人の新規症例と1万4,000人の死亡を引き起こしています。通常感染後、何十年も症状が現れず、罹患に気づかない場合が多い一方で、患者の最大1/3が後に心臓を損傷し、進行性の心不全や突然死に至る可能性があります。ラテンアメリカでは毎年、マラリアを含む他のどの寄生虫疾患よりも多くの患者が、シャーガス病により亡くなっています。

 

DNDiについて
Drugs for Neglected Diseases initiative (DNDi) は、顧みられない病気の中でも特にシャーガス病、アフリカ睡眠病、リーシュマニア症、フィラリア感染症、マイセトーマ (菌腫)、小児HIV、およびC型肝炎を対象に、新規治療開発に取り組む非営利の研究開発組織です。アフリカ13カ国を対象とした、新型コロナウイルス (COVID-19) 軽症/中等症患者の治療法特定のための臨床試験にも携わっています。2003年の設立以来、内臓リーシュマニア症 (別名カラ・アザール) のための一連の併用療法、2種類の固定用量抗マラリア薬、および新規化合物からの開発に初めて成功したフェキシニダゾールなどを含む、9つの新たな治療を開発し、患者に届けてきました。フェキシニダゾールはアフリカ睡眠病の両ステージに有効な治療薬として2018年に推奨されました。詳細については、www.dndi.orgをご覧ください。

 

英文プレスリリース リンク

 

<問い合わせ先>
特定非営利活動法人DNDi Japan
中谷 香
E-mail: knakatani@dndi.org
Tel: 03-6258-0303